2026年6月13日開催予定の「縮充に挑む実践者の集い2026」。当日は5つの取り組みを発表していただきます。

 

5つの取り組みは、課題先進地である村上地域で実践しているだけに、「課題解決先進事例」でもあります。どこが注目のポイントなのか?取り組みの背景・概略も含めてご紹介します。

森林・林業の取り組みを積み重ねてきた村上地域

面積の約80%森林である村上地域

村上地域は総面積の約80%が森林であり、林業素材生産量は新潟県全体の約半数を占めるほど林業が盛んな地域です。森からの恵みを受け食生活や文化の原点である森を守ることは今も昔も変わらず受け継がれています。

 

しかし、昨今の地域林業を取り巻く環境は厳しく、木材価格の低迷などに加え、林業従事者の高齢化等による担い手不足が大きな課題となっています。

森林環境税の創設に大きく関与した村上市

森林整備を支えるために創設された「森林環境税」。制度創設の背景には、林業の衰退による森林荒廃への懸念や、地球温暖化対策として森林のCO₂吸収機能を維持する必要性がありました。

 

1990年代初頭、森林の公益的機能は全国民が恩恵を受けているとして、「国民全体で森林を支える財源をつくるべきだ」という機運が高まり、全国の森林自治体による運動が始まりました。この運動で大きな役割を果たしたのが、実は村上市だったりします。旧山北町(現:村上市山北地区)は、1994年「全国森林交付税創設促進議員連盟」の結成を主導し、以後26年にわたり森林税創設を国に求める活動を展開しました。事務局も長年、村上市内に置かれ、全国運動の中心となっていました。

 

その後、地球温暖化対策や地方の森林管理強化の必要性が高まり、2019年度には森林環境譲与税がスタート。さらに2024年度から森林環境税の徴収が始まりました。現在、税収は森林環境譲与税として自治体へ配分され、間伐や人材育成、木材利用促進などに活用されています。

森林・林業分野の担い手育成プログラム「WOOD JOB!」(2014年〜)

県内有数の林業地域である村上地域ですが、林業従事者の高齢化や後継者不足が長年の課題となっていました。そこで、若い世代に林業の魅力を知ってもらい、将来的な担い手確保につなげようと、2014年から高校生や大学生などを対象とした林業体験プログラム「WOOD JOB!」を展開しています。

 

このプログラムは、実際の山林での間伐体験や伐採現場の見学、高性能林業機械の操作体験などで構成されていますが、単なる見学ではなく、「本物の現場」に触れることを重視している点が特徴です。

 

また、林業を単なる産業としてではなく、「地域の暮らしを支える基盤」として伝えていることも特徴です。森林が水源涵養や防災、景観形成など多面的な役割を持つことを学ぶ内容も含まれており、近年は木育や地域づくりの視点を取り込んだ活動へと発展しています。その広がりを象徴するのが、「いわふね林業塾」と「Mokurin Fes.(モクリンフェス)」です。


小学生向け体験型学習プログラム「いわふね林業塾」(2016年〜)

「いわふね林業塾」は、村上地域内の小学生(及び保護者)を対象にした体験型学習プログラムです。森林散策・間伐体験・丸太切り・木工体験などを通じて、木や森に親しみながら森林の役割を学んでもらいます。

 

2016年からはじまったこのプログラム、特徴的なのは実際に山で働く林業従事者や森林組合職員が講師となり、現場の仕事や地域林業の現状を直接伝えている点です。木材が住宅や家具になるまでの流れだけでなく、水を蓄え、土砂災害を防ぎ、生態系を守るといった森林の多面的機能についても学ぶ機会となっています。

 

また、この取り組みは単なる自然体験ではなく、「地域産業を知る教育」として位置づけられている点にも特色があります。村上地域では古くから林業が地域経済を支えてきましたが、人口減少や就業者不足が進む中で、次世代への継承が大きな課題となっています。そのため、幼少期から森や木に親しみ、「地域にはこうした仕事がある」という認識を育む狙いがあります。近年では学校教育との連携も進み、総合学習やキャリア教育の一環として取り入れられる事例も増えています。


子どもから大人までが楽しめる森林・木育イベント「Mokurin Fes.」(2022年〜)

そして2022年からはじまったのが「Mokurin Fes.(モクリンフェス)」という森林・木育イベントです。行政や関係団体・森林組合・地元企業などが連携して開催するこのイベントは、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめるよう、木工ワークショップ、薪割り体験、木製遊具コーナーなど、多彩な企画が実施されています。

 

このイベントの特徴は、「森林・林業を楽しく伝える」ことを重視し、30〜40代の若い人たちが中心となって企画・運営されている点にあります。森林空間の心地よさを体感できるような工夫やプログラムがふんだんに盛り込まれ、子育て世代や一般市民が気軽に参加できる「森林文化の祭典」として定着しつつあります。

 

村上地域では、「WOOD JOB!」を入口として、「いわふね林業塾」や「Mokurin Fes.」へと活動を広げることで、林業人材の育成と地域ぐるみの木育推進を一体的に進めています。


「地域の豊かな森林を次世代へ」若手による挑戦

こうした取り組みの蓄積から、近年では新たな動きが生まれました。若手林業関係者で構成「林業関係次世代の集い」という会の発足です。

 

地域固有の森林資源であるいわふね杉をはじめとした木材の普及啓発活動を行い、子どもから大人まで幅広い層に木材の魅力を伝え地域の活性化を図り、県北の豊かな森林・林業を次世代へ繫いでいくことを目的として2023年9月に発足しました。

 

これからの地域の林業を担い次世代へと繫いでいく若手たちの、並々ならぬ決意の表れが、こうした会の発足につながりました。


協働によって活動が着実に拡大

「林業関係次世代の集い」は、発足後、各種イベントに出展していわふね杉や林業の魅力を伝える活動を精力的に展開しています。中でも、実際の木材に触れてもらう木工体験はとても好評で、大阪関西万博2025における日本みどりのプロジェクト推進協議会主催の「One Green in EXPO 2025」に出店した際は、国内外の来場者の注目を集めました。

 

また、教育現場との連携も着実に進みはじめています。村上中等教育学校及び村上市と協働して、子ども向けに森のことを伝える絵本「たかし山へ行く」を制作し、市内の保育園をまわって読み聞かせを行う活動を展開しています。また、「木育」に着目した保育園や小・中学校での出前授業の依頼も増えてきています。

【参考】

(Things.(2024.8.20))

森や木にまつわる体験がいろいろ楽しめちゃうイベント「Mokurin Fes.」

https://things-niigata.jp/other/mokurin-fes/

 

総面積の約85%が森林の“木のまち” で「森と林業の大切さ」を絵本に 地元生徒と若手林業関係者が共同制作し県立図書館に寄贈 新潟県村上市

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2620204

 

森を守ること

https://www.youtube.com/watch?v=j5vz7k3Ln_4

 

林業関係次世代の集い(Instagram)

https://www.instagram.com/iwafunesugi/


都岐沙羅パートナーズセンターの関わり

都岐沙羅パートナーズセンター は、村上地域における「WOOD JOB!」「いわふね林業塾」「Mokurin Fes.(モクリンフェス)」のコーディネート役を担っています。中間支援組織として培ったネットワーク形成のノウハウ・経験を、森林・林業分野の事業にも存分に活かし、行政、森林組合、学校、地域住民、事業者など多様な主体の連携・協働を実現しています。

 

「WOOD JOB!」については、2014年に新潟県農林公社からの委託を受けてスタートした際から関与しています。当初は、高校生や大学生に林業の仕事を知ってもらう単なる職業体験イベントとして企画されましたが、都岐沙羅パートナーズセンターが企画・調整役となることで、林業関係者だけでは実現しにくい「教育」や「地域づくり」の視点が加わり、林業現場の体験だけでなく、地域との交流や森林文化への理解を重視する内容へと発展していきました。

 

また、「もっと幼い頃から森や木に親しんでもらう必要がある」という考えから2016年よりはじまった「いわふね林業塾」では、木箱づくり、枝打ち体験、森林散策などを通じて、子どもたちが森を「遊び場」や「学びの場」として体感できるような工夫を施し、森林体験と環境教育、地域学習を組み合わせたプログラムを確立させました。

 

そして「Mokurin Fes.(モクリンフェス)」は、林業関係者だけの催しではなく、木工、食、アロマ、アウトドア、音楽、子育てなど、多分野の人たちが参加する「森林文化フェス」となるよう、都岐沙羅パートナーズセンターが持つ地域コーディネート機能を活かし、多業種・多世代を巻き込む形でイベントとして組み立てました。