2026年6月13日開催予定の「縮充に挑む実践者の集い2026」。当日は5つの取り組みを発表していただきます。

 

5つの取り組みは、課題先進地である村上地域で実践しているだけに、「課題解決先進事例」でもあります。どこが注目のポイントなのか?取り組みの背景・概略も含めてご紹介します。

地域を知らないまま若者が地域を離れていく

新潟県村上市では、高校卒業後の若年層流出が長年の課題となっています。特に近年は、「進学を機に地域を離れ、そのまま戻らない」という傾向が強まっています。背景には、大学等の高等教育機関の偏在や都市部との雇用格差だけでなく、「地域にどのような仕事や生き方があるのか」を若者たちが十分知らないまま進路選択をしている現状もあります。

■「業種」と「職種」の認識ギャップが生まれている

地域側は企業を「建設業」「製造業」「福祉」といった“業種”で説明することが多い一方、若者たちは「デザインをしたい」「企画に関わりたい」といった“職種”で将来を考える傾向があります。

 

しかし実際には、建設会社でもSNS発信やICT活用、採用広報などの仕事があり、食品会社でも商品企画やEC運営、ブランディングなど、多様な役割が存在しています。それにもかかわらず、高校生たちには「地域企業=現場仕事中心」というイメージだけが残りやすく、「やりたい仕事は地域にはない」と感じてしまうケースが少なくありません。

 

つまり、「仕事が存在しない」のではなく、「仕事が見えていない」という状況が生まれているのです。

■キャリア教育の中で地域の仕事が見えにくい

こうした背景には、高校段階のキャリア教育の課題もあります。現在、多くの高校では進学指導や就職指導、職場体験などが行われています。しかし、「地域でどのような働き方や生き方ができるのか」まで具体的に学ぶ機会は、決して多くありません。

 

特に、地域で挑戦している若手社会人や起業家、Uターン人材などと直接話す機会は限られており、高校生たちは地域の仕事や地域で生きる面白さを十分に知らないまま進路を選択しています。結果として、「挑戦するなら都市部へ」という意識が自然に形成されやすくなっています。

地域の大人と高校生をつなぐキャリア座談会

こうした中、地域と若者をつなぎ直そうと取り組んでいるのが、一般社団法人いわふね青年会議所です。

 

【参考】一般社団法人いわふね青年会議所

https://iwafune-jc.net

 

いわふね青年会議所では、2025年度事業として、村上高校2年生を対象とした「キャリア座談会」を実施しました。この事業は、一般的な企業説明会とは異なり、「地域で働く人の生き方」を高校生たちに伝えることを目的にした取り組みです。

 

当日は、参加者が複数のブースに分かれ、少人数形式で座談会を実施しました。各ブースでは、地域で働く若手社会人や経営者らが、学生時代の進路選択/Uターンした理由/地元で働くことへの思い/仕事のやりがい/地域で暮らす実感/将来への不安や期待などについて、高校生たちと率直な対話を行いました。

 

講演形式ではなく、距離の近い対話形式にしたことで、高校生たちも気軽に質問しやすく、「地域で働く人」のリアルな姿に触れる機会となりました。

 

【参考】いわふね青年会議所・facebook

2025年度希望の希望を灯す青少年育成事業【村上高校×いわふねJCキャリア座談会】

https://www.facebook.com/IwafuneJC/posts/pfbid021Ppfx6oYdBQqKjgW7EDie8LsDPxMqSo3Wk1ZbELbjvTRkEcQMX83BRTia8aeGAbCl


■働くことだけでなく「生き方」を伝える

この取り組みの特徴は、「職業紹介」にとどまっていない点にあります。

 

地方のキャリア教育では、「地元企業への就職促進」という色合いが強くなりがちですが、いわふね青年会議所の座談会では、「どこに就職するか」だけではなく、「地域でどのように生きるか」という視点が重視されていました。

 

例えば、地域で子育てをしながら働くこと/地域課題に関わるやりがい/小さな地域だからこそ挑戦できること/若いうちから裁量を持てる環境など、都市部とは異なる地域ならではの魅力についても語られました。

 

これは、「地元に残りなさい」というメッセージではなく、「地域にも多様な選択肢があることを知ってほしい」という考え方に基づいています。

 

また、いわふね青年会議所では、2025年度に「高校生向けキャリア教育事業 地域活性化ビジネスプラン」も実施しました。高校生たちがグループワークを通じて、村上市・岩船地域の現状や課題を分析し、「地域をより良くするためのビジネスプラン」を考えてもらうという事業です。人口減少や地域課題を、「誰かが解決してくれるもの」ではなく、「自分たちが関われるテーマ」として捉え直す機会となりました。

「戻ってこい」ではなく、「地域との関係を切らさない」

人口流出対策というと、雇用創出や移住支援が注目されがちです。しかし現在は、「高校卒業時点で地域との接点が切れてしまうこと」自体が大きな課題になっています。

 

その意味で、いわふね青年会議所の取り組みは、「地域に残す」ことだけを目的としているのではありません。

 

むしろ、地域の仕事を知る/地域の大人とつながる/地域で挑戦する人を知る/地域を将来の選択肢に入れるという、「地域との関係性を持ち続ける土台づくり」に大きな意味があります。

 

高校生とのキャリア座談会やビジネスプラン事業は、すぐに人口流出を止める特効薬にはならないかもしれません。しかし、「地域を知らないまま地域を離れていく」という構造を変えていく上で、非常に重要な実践の一つとなっているのではないでしょうか。


都岐沙羅パートナーズセンターの関わり

実は、都岐沙羅パートナーズセンターでは、2014〜2019年の6年間、村上中等教育学校5年生を対象とした地域学習の支援を行っていました。地域内のさまざまな職種の方々をゲストにお招きし、ゲストに「仕事への想い」を根掘り葉掘りインタビューしてもらい、その結果をポスターや動画にしてまとめるという授業でした。

 

授業そのものは学校・地域双方から非常に高く評価していただいてましたが、残念ながらコロナ禍によってこの授業は立ち消えとなってしまいました。

 

そんな中、いわふね青年会議所の皆さんがキャリア座談会として新たな道を切り開いてくださいました。ただ、青年会議所の事業は単年度制であることから、2026年度以降はいわふね青年会議所の全面協力を得ながら、都岐沙羅パートナーズセンターがこの事業を引き継いでいきます。